京都大学人文科学研究所

班長　重田　みち

本研究では、「日本の伝統文化」と呼ばれてきた芸道文化を取り上げる。すなわち、茶道・能楽・花道・蹴鞠等、及びその空間を構成する建築・庭園・絵画・器物等の文物である。これらは明治期以来「日本の伝統文化」の重要な一翼をなすものと位置づけられ、その後鈴木大拙・久松真一らにより欧米にも紹介された。またその際、その精神を支えるものは「禅」であるとも説明されてきたが、それ以来、これらの文化の研究では、これらの位置付けや説明を甘受してきたように見受けられる。
しかしこれらの位置づけや説明は、中世以来の芸道文化の実態を忠実に反映していないのではないか。そのように考える理由は次のとおりである。(1)歴史的に見れば、「日本」文化とは言っても実際には大陸文化的性質が強い。(2)一概に禅に由来する文化とは言えず、中国古代の儒教儀礼・宋元時代の新儒教・禅以外の中国仏教等々の影響を考えるべきである。つまり、様々な思想的・文化的要素から複雑に構成されている。(3)近代に入りこれらを「伝統」文化と呼んだことには、欧米に対抗するために日本文化を権威付ける意図があり、それには一定の効果はあったが、その用語のために、芸道が古来変わらぬ日本の文化であったかのような印象を与えている。しかし実際には、前近代はもちろん近代以降今日に至るまで、芸道には、時代や社会に応じて新しい要素が加わり、新たな変化が生じている。
このように、芸道文化への近代以降の理解は、その歴史の実態と隔たっている。そこで本研究では、そのような理解によって不可視化された芸道の様々な面に着眼し、あらためて歴史的・実証的な考察を加える。それを通して近代以降の理解を乗り越える視座を獲得することを、本研究の目的とする。

研究期間：2020年4月～2023年3月

班員（学外）

氏名	所属
佐々木 孝浩	慶應義塾大学斯道文庫
上川　通夫	愛知県立大学日本文科学部
水口　拓壽	武蔵大学人文学部
外村　中	ドイツ・ヴュルツブルク大学
井上　治	京都芸術大学
柳　幹康	花園大学
シビル　ギルモンド	ヴュルツブルク大学
今枝　杏子	神戸女学院大学
西谷　功	泉涌寺・心照殿
神津　朝夫	立命館大学
ガリア　ペトコヴァ	関西学院大学
田中 　健一	文化庁
竹内 　有一	京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター
宮崎　涼子	京都芸術大学

 

班員（学内）

氏名	所属
成田　健太郎	文学研究科
陳　　佑真	文学研究科
王孫　涵之	文学研究科

 

班員（所内）

氏名	所属
高木　博志
菊地　暁	副班長
岡村　秀典
稲本　泰生
古勝　隆一
福谷　彬
高階　絵里加