■称号 |
人間の生き残りは、環境との媒介の成否次第である。媒介は、科学技術のみならず、「身体的テクニック」(M.モース)から社会契約・主権国家に至るまで広い。これらすべてを含む技術の思想史の構築は、個人と文化共同体の生き残りの知の一環として焦眉の課題である。それが問題なのは、核技術・環境問題が人類の存亡に直接に関わるからというだけではない。人間の側にも危機は存在する。例えば、技術への対抗として積み重ねられた技術の公共性や規範をめぐる議論は、ビッグデータや人工知能の急速な台頭によって、その大半が時代遅れとなりつつある。現代的議論は色褪せ、ポスト現代の論点は未熟なまま、これが現状だ。要するに、危機は全般的状況となっている。抵抗の拠点はいずこに?技術の全般的危機を哲学的に探求し、そこから現実に関わる思想の構築を目指す。