■ 学位 博士[人間・環境学](京都大学) ■専門分野 文化人類学 アフリカ、南アジア研究 ■研究テーマ 宗教、呪術、憑依に関する人類学的研究 |
人類学の黎明期以来、呪術や憑依現象は重要な研究テーマであり続けてきた。なかでも憑依は分析者による多様な解釈を導く現象であるが、人類学においてはしばしば、社会的な逸脱行動と社会による再統合のプロセスとして説明されてきた。憑依される者の主体性やエイジェンシーに着眼した近年の研究は、社会的弱者による象徴的な抵抗、アイデンティティの構築やモダニティへの参入の手段として憑依現象を意味づけている。こうした視座に対して、本研究は西アフリカと南インドの神霊憑依を対象として、地域社会のミクロな政治経済、神霊憑依と祭祀の歴史、憑依と間身体性に焦点を当てた調査研究を行う。これによって、「社会的弱者の抵抗」や「モダニティへの参入」という分析枠組みに還元することのできない、人々の生活実践と地域社会の歴史、そして身体性と不可分に結びついた憑依現象の動態と独自の論理を明らかにする。さらに、現象学やオートポイエーシス論を含めた身体論の視座から呪術・憑依現象を考察したい。