■ 学位 |
これまでの農業史は、主として人間と人間の権力関係を描いてきた。本研究は、人間、集団、環境という三つの側面の物質・貨幣交換の営みから農業史を再構築する試みである。近年発展してきた環境史の手法をとりいれつつ、とりわけ、食をめぐるさまざまな要素を同じ次元で論じることができるような分析枠組みを考えたい。たとえば、台所と農場(空間)、冷蔵庫と農業機械(テクノロジー)、洗剤と農薬(化学)、戦時と平時(時代)というような一見異なる分野の要素を、同じ平面のうえで配置しなおしたい。この作業は、飢餓、貧困、食の劣化、食品偽装、農民の自殺の増加など、食の消費と生産をめぐる現在のさまざまな問題をとらえなおすヒントとなるだろう。