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中国雲南省北部から四川省西部の高原は,ヒマラヤから続く山岳地帯の東端にあたり,その西北は平均標高が2千メートルを越える青藏高原が続く。険しい山々の間を幾筋もの河が流れ,谷あいの草地から山腹には半農半牧のチベット系民族が暮らしている。南北に流れる河川に沿った渓谷には古代から路が通じ,民族移動のルートとなって来た。〈川西民族走廊〉と呼ばれるこの地域には,十数種類もの少数言語が話されており,互いにほとんど理解し得ないほど異なる言語でありながら,音韻/語彙/文法の各レベルにおいて共通した類型構造が認められ,古い時代のチベット-ビルマ諸語の特徴を現代に伝承してきている。本研究では現地調査を基礎に個別の方言を記述分析してその諸特徴を明らかにするとともに,言語間の相互比較や歴史資料との対応からより古い段階の状態を推定して歴史的変遷の過程を跡付け,川西走廊諸語の類型構造の発展のメカニズムを探究して行く。