班長 鳥山 定嗣
ポール・ヴァレリー(1871-1945)についての研究はこれまで作品および『カイエ』に重点が置かれてきましたが、近年あいつぐ伝記や書簡の刊行によって、ヴァレリー研究は大きく様相を変えつつあります。
本研究の目的は、そうした新たな研究動向にそって、青年期の友人(ジッドやルイスなど)との書簡、またヴァレリーの後半生を彩る女性たち(ポッジ、ヴォーチエ、ヴォワリエなど)との恋愛書簡を読むことにより、「テスト氏」や「純粋自我」の概念に代表される主知主義的かつ自己充足的な作家像とは異なるヴァレリーの姿、すなわち青年期から最晩年まで、同性/異性、友人/愛人の相違はあれ、「他者」を希求しつづけたヴァレリーの「自己」のあり方を問い直すことです。
特定の他者との間に交わされる「書簡」は、不特定多数の読者に向けられる「作品」とも、孤独な精神の日記「カイエ」とも異なる独自のエクリチュールであり、その特質を探ることは、作者・書かれた物・読者という三項関係のもとで「書く行為」について再検討する意義もあると考えます。
氏名 | 所属 |
鳥山定嗣 | 名古屋大学 |
松田浩則 | 神戸大学 |
今井勉 | 東北大学 |
塚本昌則 | 東京大学 |
氏名 | 所属 |
森本淳生 | 副班長 |