絵画修復への寄付

東日本大震災への対応

みやこの学術資源研究・活用プロジェクト

研究期間 2015年4月~2017年3月

 (プロジェクト代表:高木博志、プロジェクト委員:石井美保、石川禎浩、稲葉穣、岩城卓二、高階絵里加、立木康介、藤原辰史)

プロジェクトの意義

 京都のさまざまな学術研究教育機関に所蔵されている学術資源の調査・整理・研究にもとづいて、主として明治期以降に西洋から我が国に移入された近代的学知が、教育や翻訳をつうじて受容され、近代以前の伝統的・土着的な知や文化と融合しながら、現代に向けて発展してきた道すじを、江戸や東京とは異質な文化的・知的背景をもつ京都や京都大学の独自性を踏まえつつ、跡づけ、再構成することをめざす。これは同時に、現代日本が拠って立つ知的・学術的基盤がいかに形成されてきたのかを複眼的にふりかえる作業でもある。日本の近代化過程は、日本人の関心はもとより、アジアや欧米からの留学生・研究者の関心をも惹きつけてやまない。本プロジェクトはこの過程を、豊かな伝統的知をもつ京都という観点から、また、文書から絵画資料、実験器具に至る具体的なモノを通して、描き出す試みである。さらにプロジェクトを通じて、アカデミズムのなかで学知を完結させるのではなく、地域に根ざした人々との共有の知のあり方を模索したい。

 本研究所には、過去に行われた共同研究のうち、国際社会の中で日本の近代化を考えるものとして、『ブルジョワ革命の比較研究』(桑原武夫編、1964年)、『近代日本のアジア認識』(古屋哲夫編、1994年)、また京都という独自の文化的基盤を考察するものとして、『文明開化の研究』(林屋辰三郎、1979年)、『近代京都研究』(丸山宏他編、2008年)などの先例がある。他方、『人文科学研究のフロンティア』(2001年)や『京都大学人文科学研究所創立80周年』(2009年)『京都大学人文科学研究所社会人類学部門の五〇年』(2010年)において、本研究所を中心とする京都大学の学術資源の調査と総括を手がけたほか、共同研究班「人文研探検」(2007~2009年度)を組織し、所内の事務書類や学術調査史料などの目録作成をおこなった。このように本研究所には、学術資源の集積と分析を主眼とする総合的研究を行うための力量、スキル、および方法論が蓄積されている。

 本研究所スタッフの学際性を生かし、調査・集積された学術資料や文献の解読・解析に領域横断的に取り組むことで、京都や京都大学に眠っていた学術資源を現代によみがえらせるとともに、足元の京都大学が学術研究の営為の「記憶喪失」に陥らないよう、それらの学術資源を後世に向けて伝達してゆく方法を探索する。

プロジェクトの内容

1、基幹プロジェクト(「京都大学学術資源調査」)

 

 本研究所が主体となり、学内外の諸機関と共同して、「京都学術資源調査」プロジェクトを組織する。

 プロジェクトは、①「京大自然科学系図書館の科学史的調査」、②「京都大学美術資源の所在の予備的調査」、③「「京都大学農学部旧蔵農業経済関係新聞記事スクラップ」のデータ化に向けた基礎作業」、④「人類学的学術資源の再発見――フィールドワーカーの足跡をたどる」、⑤「京都における日欧交流史の初期調査」、⑥「近代京都研究のための予備的調査」、⑦「京大東洋学研究のための予備的調査」のサブプロジェクトからなる。

2、国際連携機能の強化や地域との関わりについて

 プロジェクトを通じた京都大学の学術資源の調査を進めるとともに、国際連携による近代日本・近代京都研究の研究拠点をめざす。人文科学研究所はこれまでにも、フランス国立極東学院(EFEO)、イタリア国立東方学研究所(ISEAS)、アジア臨地研究欧州コンソーシアム(ECAF)との連携のもと、各種学会を開催するとともに、関西を中心とする外国人研究者のネットワークを活用して月例講演会Kyoto Lecturesを共催し、内外の研究者の交流を促進してきた。また、これらの機関を窓口として来日する若手研究者を様々な形で受け入れ、国際的研究推進にも寄与してきた。以上のような活動の総体を、今後は系統的に行い、海外機関・研究者との連携を一層強化してゆく。

 また本研究所のCOC機能の中核を担うものとして、「人文研アカデミー」を活用し、講演会やシンポジウム、出版等により学生や地域へ、プロジェクトの成果を発信してゆく。

 なお本プロジェクトを発展させ、将来には「みやこの学術資源研究センター」を人文科学研究所内に設置する。