イスラムの東・中華の西-前近代ユーラシアにおける文化交流の諸相

班長 稲葉穣

イスラムの東・中華の西-前近代ユーラシアにおける文化交流の諸相
ウズベキスタン共和国クヴァ遺跡出土「悪鬼像」頭部(ウズベキスタン国立工芸美術館蔵)。2002年稲葉撮影

イスラムの東・中華の西、とは、東アジアの中華文明と西アジアのイスラム文明の間にあって、その両者との間に稠密な文化交流、文化交渉を行ってきた、南アジア、中央アジア世界をおおよそ含む地域として想定されている。前近代において、イスラムと中華の両世界が互いについて情報を集め、互いを描写しようとして来たことは古くよりよく知られている。

19世紀以降このような記録に関心を持っていわゆる東西交渉史の分野で大きな貢献をなしたのが、ヨーロッパの東洋学者と日本の中国学者であった。それら第一世代の業績はその後批判的に継承され、彼らが明らかにしたことの多くの部分が新たに書き換えられたと言ってよい。しかしながら、20世紀後半以降、この二つの世界の間に位置した中央アジア、南アジア研究の進展から得られた新たな知見は、再び古い世代の研究の枠組みに光をなげかけつつある。

本研究班では、これらパイオニアたちの提示したパースペクティブを、最新の発現資料によって検証し、古代から近代におよぶ文化交渉と文化変容の有り様を多角的に考究することを目指す。ユーラシアを東西に貫く一体性と、そこに内包される多様性への視角は、現代のグローバリゼーション下の様々な現象を考えるという作業とどこかで接続しうると考えるからである。


所内班員
船山徹、稲本泰生、中西竜也