班長 水野直樹
1938年頃、朝鮮総督府が作製・配布した絵はがきセット |
日中戦争の開始から日本の敗戦までの8年間は、植民地朝鮮においては「皇民化政策期」あるいは「内鮮一体政策期」と呼ばれる。この期間には、朝鮮の人的・物的資源を戦争に動員するために様々な政策が実施された。志願兵制度、労働者戦時動員、供出、徴兵制など戦争遂行に直接むすびつく政策だけでなく、日本語常用、神社参拝、創氏改名など「皇民化政策」と呼ばれる各種の政策が実施された。それらの政策については、歴史認識の問題と関連して現在も様々に論じられているが、往々にして基礎的資料を無視して議論される傾向がある。植民地支配政策やその実態、あるいは朝鮮社会の側の対応などに関する資料が決定的に不足していることがその原因である。戦時期であったため、印刷物の形で残された資料がきわめて少ないことは事実であるが、新聞・雑誌などの基礎的な資料、さらに活字化されなかった文書資料などにもとづいて戦時期朝鮮社会の諸問題を明らかにすることが必要である。本共同研究は、資料の発掘・整理を第一の課題としながら、それらにもとづいて当該時期の朝鮮における政治・社会・文化などに関わる諸問題を実証的に研究することをめざすものである。
所内班員 小野容照 |